拒食症。
中学一年の時、ダイエットを始めた。
周りより太ってる気がして。
夏が始まり、秋になり、冬になるころには骨と皮のようになっていた。
食べ物は、ほとんど食べなかった。
毎日毎日体重だけが減っていった。
痩せていくことが楽しく感じていた。
その頃、母は再婚していた。
姉は父の家へ泊まることが多く、帰ってこなかった。
姉なりの反発だった。
姉は外に発散するタイプで、私は小さな頃から毎日のように意地悪をされ泣かされ続けた。
私はいつも弱くて、すぐに泣く子供だった。毎回毎回泣く私は親からは疎ましい存在だった。父は弱い私よりも姉のことばかり可愛がっていた。
両親共に姉のことを叱るわけでもなく、ただ、ただ、わがままで奔放な姉に振り回されていた。私はそんな姉を見て、親を困らせることをしないように自分の気持ちを内に押し込めるタイプの子供だった。
母の再婚相手とご飯を食べる、出かける。
嫌だったけど、母が望むからそうした。
離婚してすぐなのに、なぜ男の人がうちにいるんだろう。
そんな疑問も打ち消した。
父にはずっと申し訳ない気持ちだった。
一緒に住むことができなくて。(父を選ばなかったから。)
罪悪感だけが増していった。
姉は一切の母の再婚相手と一緒にご飯を食べたり、出かけたりを拒否した。
当たり前だ。子供にとって相当に嫌なことだ。
そうやって姉のように外に出せたならまだいいけれど、私は母の手前出せなかった。
母が大好きだったからだ。母に振り向いて欲しかったからだ。
母が私の方を見てくれていないと小さな頃から感じていたから、病的に痩せていく私を見て、母は甲斐甲斐しく病院に連れて行ってくれたりすることが、振り向いてくれたようで嬉しかった。
体調が戻り出した頃、母に言われた。
「もうやめてくれよ。こういうことは。」
そうか、迷惑だったんだな。私が拒食症になったのは。心のどこかでそう思った。
誰も私が出していたSOSに気づくことはなかった。
それからずっと抑えられていた心が悲鳴をあげるのには 時間はかからなかった。